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再生医療

2022/04/14
【Dr.もといの再生医療最前線!】4.やけどと再生医療

やけど。

聞くだけで、痛そうなどイメージが湧いてきます。

程度はあると思いますが、一度は経験されたことあるのではないかと思います。ありふれた怪我の一つです。

 

小さく浅いやけどでしたら塗り薬だけ、ということもあります。しかし広くて深い場合には命に関わることもしばしばあります。そんなやけどにまつわる脂肪由来幹細胞について、今回はその紹介をしたいと思います。

 

皮膚はバリアです。体の中と外を分ける、壁のような働きをしています。その壁である皮膚には、外張りである表皮、内張りとして弾力を持つ真皮があります。内部には血管などのパイプラインやエネルギー庫である脂肪、もっと深くなると筋肉、骨がそれぞれの持ち場で役割をもって働いています。

 

さて、やけどというのは、外敵が攻めてくることで強固なはずの壁を破壊されてしまい、傷ができてしまった状態です。体は傷ができたその瞬間から、その部分を治そうと、せっせと働き始めます。

 

まず幹細胞は炎症反応を抑え、細胞増殖や血管新生を促進することで、傷を治す効果が期待されています。その他にも、シグナル経路への良い影響が指摘されています。

 

シグナル経路は簡単にいうと細胞同士の報連相のようなもの。社会と同じように問題を解決するべく、局所の細胞たちは連携をとるわけですが、幹細胞のように「生きた」薬は傷に起こる細胞間の連携にも影響を与えます。

 

皮膚の傷を治す経路はざっくり5種類くらいあって、簡単にはWnt、TGF-β、PI3K/AKT、Notch、Shhなどと呼ばれます。

 

それぞれ報連相の先に何を治すのが得意という棲み分けがあって、Wntは表皮などの壁構造、TGF-βは真皮と表皮-真皮の連携、PI3K経路は血管などのパイプライン、Notchは幹細胞の維持などの後方支援、Shhは血管新生に毛包などの付属器の形成に重要な役割を持ちます。それぞれの経路を促進することで傷の治りに働くと言われています。

 

そのほか、手術で切除した組織の中から幹細胞を取り出して利用する、というものもあります。深いやけどの場合、ダメになった皮膚(壊死組織)を残しておくことでバイキンがついたり、傷の治りにはよくないことが起こります。そのため治療の一環として手術で壊死組織を取り除くことがありますが、その中から幹細胞を取り出して再利用するというものです。発想が面白いなあと思いました。

 

深いやけどは、突然攻めてきた巨人に街をぐちゃぐちゃにされた進撃の巨人のオープニングさながら、大惨事となります。壁を直しつつ、壁の中の荒れた部分を治す、やけどの治療はウォールマリア奪還作戦のようです。

 

進撃の巨人XRライドが、ユニバーサルスタジオで人気を博しているようですね。夏までの限定とのこと、いつか乗ってみたいと思います。

 

ではまた!

 

加藤基

 

参考資料

Abdul Kareem N, Aijaz A, Jeschke MG. Stem Cell Therapy for Burns: Story so Far. Biologics. 2021;15:379-397. Published 2021 Aug 31. doi:10.2147/BTT.S259124

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