急に無理な動きをすることで筋肉に負担がかかり、筋線維が損傷、断裂してしまうのが「筋断裂」です。一般的には筋断裂は完全な筋肉の断裂を指しますが、部分的な筋断裂は「肉離れ」と呼ばれていますね。(本記事では「筋断裂」に包括記載いたします)
激しいスポーツをするアスリートだけがなるものではなく、運動不足や加齢によって筋力が低下している人も要注意!
1日の大半を座って過ごしている現代人にとって身近なケガと言える「筋断裂」の原因と症状について松﨑医師にうかがいました。
本記事の要約
筋断裂や肉離れは、急激な動作や筋力・柔軟性の低下、加齢、水分不足などが原因で起こる筋線維の損傷です。特に太ももやふくらはぎ、肩周辺で発症しやすく、強い痛みや内出血、歩行困難を伴います。スポーツだけでなく、日常生活でも誰にでも起こり得るため、予防と早期の対処が重要です。
筋断裂が起こるおもな原因と部位
運動中に「プチッ」と音がして、その後に激しい痛みが現れ歩けなくなった。
筋断裂を起こした人から聞く症状です。なかには「こむら返りかと思った」という人も。
筋肉は筋線維と呼ばれる長細い組織が集まってできています。この筋線維が損傷・断裂するのが「筋断裂」や「肉離れ」です。筋肉に過度の負荷がかかることで発症のリスクが高くなりますが、筋力の低下などほかにもいくつか原因が考えられます。
急激な動きや過度の伸展で起こりやすい太もも
テニスやサッカー、バレーボールなど瞬発的に走ったり、止まったりするスポーツをしている人は、筋肉が急に伸展するためその負荷に耐え切れず筋断裂や肉離れが起こります。
練習量が多く、何度も何度も繰り返し同じ動作をすることで過度な負荷がかかり、太ももの前にある大腿四頭筋、裏にあるハムストリングスが断裂しやすくなっています。
スポーツ選手に限らず、普段あまり運動していない人が急な方向転換やダッシュをしたときも起こりやすくなるので注意が必要です。
筋力、柔軟性の低下で起こりやすいふくらはぎ
筋肉量が少なく、筋力が弱い人も過度な負荷に耐えらずに筋断裂のリスクが高まります。10代、20代の若い世代でも筋力が弱い人が増え、日常の何気ない動作でも筋断裂を起こして受診する人も。
日常的に運動をしていない人が足を滑らせ、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋、ヒラメ筋)を断裂することはよくあることです。
スポーツの練習が続き筋肉に疲労が蓄積しているときや、準備運動不足で柔軟性が不十分なときも発症しやすくなっています。
加齢による筋力低下、腱の劣化による腱断裂を起こしてしまうものも
トレーニングをしていないと50代から急激に筋肉量は減少していきます。年を重ねれば重ねるほど筋力は弱くなりますし、柔軟性も失われていくため断裂しやすくなります。
また、高齢者に多い回旋筋腱板(肩甲骨と上腕骨をつないでいる4つの筋肉の腱の総称)断裂は、腱の劣化が原因であり、腱が弱っているところに急激な負荷などで断裂してしまう、これは腱板断裂と呼ばれており、腱断裂の一つになります。
急に肩が痛くなったり、寝ている間に痛みが出ることが多くあります。
血行不良、水分不足
血液循環が悪くなると筋肉の柔軟性が低下し、断裂を起こしやすくなります。夏は冷房で体が冷えやすいので冷え対策をしましょう。また、運動前に十分なウォーミングアップを行ってください。
水分不足も筋肉をかたくするため、断裂のリスクが高まります。運動中だけでなく、汗をかく季節はこまめに水分補給をしてください。
痛みのほかにどんな症状が現れるのか
「足がつったときのような痛みがあった」「激痛で足を地面につけることができない」など、筋断裂の主な症状は強い痛み。重度になると腫れや内出血を起こすこともあります。
断裂した部位の強い痛み
筋線維が損傷を受けることで痛みが生じます。動かすと強い痛みがある、安静にしていても我慢できないくらいの痛みがある場合は、重い症状なので早めに受診しましょう。
内出血
筋断裂によって内出血(皮下出血)が起こり、患部の皮膚が青紫色に見えることもあります。出血量が多くなると、血管や神経を圧迫し「コンパートメント症候群」を引き起こす恐れがあり、最悪の場合、周辺部位が壊死することも。
歩行困難
重度の場合、立ち上がったり歩いたりすることが難しくなります。痛みだけでなく痺れも伴うことも。無理に動かさず、まずは安静にしていることが大切です。
筋断裂は重症の場合、手術が必要になることもあります。放置せず、早めに適切な治療を受けることが大切です。次回は治療法と再発予防についてお話します。
FAQ
Q1. 筋断裂とこむら返りはどう違いますか?
A1. こむら返りは筋肉の痙攣による一時的な痛みで、筋断裂は筋線維の損傷による強い痛みと腫れ、内出血を伴うことがあります。
Q2. 筋断裂はどのような場面で起こりやすいですか?
A2. 急な運動、準備運動不足、足を滑らせたとき、筋肉疲労や加齢による筋力低下があるときに起こりやすいです。
Q3. 筋断裂になった場合の対処法は?
A3. まず安静にし、患部を冷やして腫れを抑えます。歩行困難や強い痛みがある場合は、早めに医療機関を受診してください。