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再生医療

2023/09/18
【培養幹細胞治療の学び】変形性膝関節症に対する最新の再生医療技術とその選び方
今や国民病のひとつとも言われている膝の痛み。その痛みは「変形性膝関節症」によるものがほとんどです。加齢や筋肉量の低下により、クッションの役割をしている膝関節の軟骨がすり減り、関節の変形が起こる疾患です。放っておくと歩行が困難になるおそれも。進行度合いによってさまざまな治療法があります。従来の治療法と再生医療による治療法について解説します。
 
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現在、医療機関で受けられる変形性関節症の治療法

膝の痛みや腫れを改善するためには、損傷を受けた部分を修復することが必要。しかし、関節の内部は血管が乏しいので、修復に必要な細胞などの材料が届きにくい環境です。そのため、膝だけでなく関節は一度ダメージを受けたら二度と修復できないと長年考えられ、「根本的な治療法はない」と言われてきました。
実際は、関節を包んでいる滑膜という膜から滑膜由来の幹細胞が関節内に出てくることで、自然に修復は行われています。
再生医療での治療についてお話しする前に、一般的に行われている治療法について紹介します。
 

薬などで患部の炎症を抑える「保存療法」

投薬、ヒアルロン酸注入、湿布治療、リハビリテーションで炎症を抑え、痛みを軽減するのが「保存療法」です。
初期の変形性膝関節症と診断された場合、湿布や痛み止めが処方されます。湿布で炎症を抑えることができれば、関節が硬くなるのを予防する効果も得られます。それでも治まらない場合は、ヒアルロン酸を関節内に注入する方法が選ばれることが多いでしょう。ヒアルロン酸は潤滑油の役割を果たしてくれます。
リハビリテーションには運動療法と物理療法があり、物理療法では機械や道具を使って痛みを緩和させていきます。リハビリテーションは手術後や幹細胞治療のあとにも行われます。
保存療法は、つらい症状を軽減する対症療法です。一時的に痛みが治まっても根本的に病気が治るわけではありません。
 

人工関節置換術などの「手術療法」

半月板の損傷や軟骨のすり減りには、膝に小さな穴を数カ所開け、そこから内視鏡(関節鏡)を入れて行う関節鏡視下手術が適用されます。膝を大きく切開せずに、傷んだ組織を切除するので、患者様に負担が少ない手術法です。
 
膝関節の近くにある脛の骨を切ってO脚を矯正し、金属プレートを入れて固定するのが骨切り術。症状が進行し、脚が極度なO脚になっている場合に行われることが多い術式です。
 
関節の骨そのものを人工関節に置き換える大がかりな手術が、人工関節置換術です。膝を切開し、大腿骨と脛骨の間に金属やプラスティック製の人工関節を埋め込み、ボルトで固定します。日本では30年以上前から行われてきたポピュラーな術式です。
 
人工関節置換術は、膝の変形が激しく、痛みも強く歩行が困難な方に有効です。保存療法や幹細胞治療で改善しなかった方にとっては、関節の痛みが軽減され、生活の質が上がるとてもいい術式です。
ただし、注意点もあります。手術には感染症をはじめとする合併症のリスクはつきものです。また、人工的な関節なので耐用年数に制限があり、場合によっては再置換術が必要になることも。手術が成功しても幻肢痛といって、取り去った関節が発していた痛みを術後も感じる現象が起こる可能性があります。
 

鍼灸や指圧などの東洋医学的アプローチの「補完代替療法」

炎症部位を切除するといった西洋医学ではなく、鍼灸やあん摩、柔道整復、整体などの東洋医学的な療法を「補完代替療法」と言います。アメリカが発祥と言われているカイロプラクティックもWHO(世界保健機関)の分類によると補完代替療法のひとつです。
心身のバランスを整え、自然治癒力を高めていくものですが、根本治療ではないので、一時的に痛みが治まってもまたぶり返すケースがほとんどです。
 
 

変形性膝関節症治療の新しい選択肢が再生医療

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膝の再生医療とは

従来の治療法は痛みを緩和するものか、膝を切開する手術しかありませんでした。どちらも根本治療ではないため、痛みがぶり返したり、再手術が必要になる場合も。手術は体への負担も大きいため、できれば避けたいと考える患者様もいらっしゃいます。
新たに加わった治療法が再生医療です。自らの細胞を培養して治療に用いるので、体への負担もほとんどなく、拒絶反応もないまま軟骨自体の再生による症状の改善が期待できます。当クリニックで主に行っているのは、患者様の脂肪から分離した脂肪幹細胞を用いる幹細胞治療ですが、ほかの再生医療も変形性膝関節症の治療に用いられているので簡単に説明しましょう。
 

再生医療の治療法と種類 - 血液から分離した血小板を用いる「血小板療法」

血小板には傷んだ組織の修復を促進する物質を供給し、自己治癒力を高める働きがあります。膝関節の治療では、患部に注射で注入することで細胞の炎症と痛みの軽減が期待できます。しかし、血小板が軟骨細胞そのものに代わるわけではないので、膝を根本的に治すところまではいきません。
 

再生医療の治療法と種類 - 培養液の上澄み液を用いる「培養上清療法」

細胞を培養する過程で得られる培養上清に含まれるサイトカインやエクソソームの効果を期待する療法です。別名「サイトカイン療法」とも呼ばれています。
サイトカインとは、細胞が出すたんぱく質のことで、「免疫や炎症」「細胞の分化、増殖」「傷の修復」に関するものなど、いくつも種類があります。
培養液の上澄み液を抽出したものを患部に注入することで炎症と痛みを軽減し、傷ついた細胞の修復や再生を早める効果があると考えられています。ただ、まだ治療法としては確立されていません。
 

再生医療の治療法と種類 - 患者自身から採取した細胞を用いる「自家培養軟骨治療」

その名の通り、患者様の膝から採取した軟骨細胞から幹細胞を分離し、それを培養して用いる治療法です。ブロック状にした培養幹細胞を膝軟骨に張りつけて欠損部分を補修します。保険が適用される治療ですが、スポーツによる外傷性軟骨欠損症など治療の対象者が限られています。
 

再生医療の治療法と種類 - 軟骨や半月板の再生には「滑膜由来幹細胞治療」

滑膜はとても薄い膜で関節の内側を覆っています。滑膜から関節液が分泌され、それがクッションとなり関節の動きをスムーズにしています。関節液にはヒアルロン酸やたんぱく質が豊富に含まれ、軟骨細胞に栄養を補給する役割も担っています。この滑膜の幹細胞を利用し、軟骨や半月板の再生をするのが「滑膜由来幹細胞治療」です。 
 

治療の計画と準備

当院ではカウンセリングを行っておりますので、まずはカウンセリングのご予約をいただき、実際に治療の計画と準備を進めてまいります。治療の手順としては以下を参考にしてください。
 

血液や自己細胞の採取と加工

1)関節鏡を使用して、患者様の膝関節内から滑膜を採取し、滑膜由来の幹細胞を分離する。
2)幹細胞を酵素処理したあと、患者様の血液からつくった血清に浸して2週間培養する。
3)培養細胞が必要な数まで増殖したら、関節鏡を使用して幹細胞のかたまりを欠損した部分にのせる。
 
内視鏡手術や場合によっては切開手術を伴うため、心身にかかる負担は決して軽くはありません。
 

再生医療の効果とリスク

再生医療を用いた治療のメリットとデメリット

再生医療が加わり、治療の選択肢が増えました。どの治療法に対してもいい点だけでなく、注意点、リスクはあります。患者様の症状に合わせ、治療法を提案する際にしっかりと説明をいたしますので、納得のいく治療法を一緒に選んでいきましょう。
 
当クリニックで主に行っている脂肪由来の幹細胞治療については、次回解説いたします。
 
<記事更新:2024年6月25日>

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