
サウナはリンパ浮腫のリスクになるか?
”みんなのリンパ浮腫”アカウントに様々なご質問をいただきます。
リンパ浮腫の臨床的な発生リスク(手術方法や放射線療法など)に関する研究はたくさんありますが、日常生活とリンパ浮腫発生の関連についての質の高い研究はそれほど多くなく分からないことも多いです。
本日は、いただいた質問の中で“リンパ浮腫リスクのある人はサウナに入っていいのか?”というものがありましたので、科学的根拠とともにお答えしようと思います。
結論としては、サウナは避けた方がよいでしょう。
今回ご紹介する研究1は、アメリカのペンシルベニア大学で行われた、295人の乳がん生存者(少なくとも1つのリンパ節を切除した者)を対象に、腕のむくみと関連する可能性のある30の生活行動への暴露を調査した研究になります。前向きサブグループ解析で比較的エビデンスレベルの高い研究です。
全30の生活行動の中で腕の腫脹(健側と患側の体積差の5%以上の増加として定義)の発生と有意に関連した唯一の危険因子が”サウナ利用”でした。その他、日焼け、火傷、浴槽使用、血圧測定などは有意な危険因子ではありませんでした。
(文献1より抜粋)
ただし、この研究でサウナの利用を報告した参加者の数は少なく(295人中13人[4%])、著者らはサウナ利用と患側の腕に切り傷があることとの間に有意な関連も報告しており、サウナの高温環境への曝露それ自体が腕の腫脹の原因ではない可能性もあります。
サウナが極端な温度がリンパ浮腫の危険因子であるかどうかを確認するためには、さらなる研究が必要と著者らも述べており、現時点では「サウナは辞めておいた方が無難」というのが個人的な見解です。この結論は今後覆されるかもしれませんね。
(辛川領)
参考文献