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再生医療

2022/07/13
【Dr.もといの再生医療最前線!】9.拒絶反応のリスクが少ないiPS細胞

「君子、和して同ぜず。」 論語 子路

 

再生医療の中心的な存在として、現在の医療開発に欠かせない存在。iPS細胞があります。しばらく前にiPS細胞を増やして網膜シートを作成し、眼病の患者さんに移植したことが報告されていましたが、いまや研究を超えて臨床応用が進んでいます。

 

そんな中で問題となるのが免疫のこと。要は人からもらったものは自分のものと違いますよね、ということで体が拒絶反応を起こしてしまうのです。そのためiPS細胞を医療応用するには、さまざまな工夫が施されています。

 

どんな工夫が考えられるでしょうか。

 

まず思いつくのは、本人の細胞をiPS細胞に変えて、そこから増やしたものだけを使用するというもの。そうです、これが最初の一歩だったようです。しかし、これにもデメリットはあり、毎回すべてをカスタムメイドしないといけないことになりますので、莫大なお金がかかる。時間もかかる。製品化しづらい。

 

そこで、別の考え方として、免疫弱い人の細胞をストックしとけばいいじゃん、という話です。少し話はそれますが、血液を輸血するときにO型の血液はA型やB型の人に投与しても問題は起きませんが、逆ではうまくいきません。血液でいうところのO型のように「誰にでもあげられる免疫の細胞」をもつ細胞をiPS細胞にしてストックしておけば、困らないよね。という解決方法です。いろいろ考えますよね。血液型ほど単純ではないものの、いくつかの種類をストックしておくとおおむねほとんどの人に対応できるiPS細胞のストックができる。

ただ、全員ではない。

 

これらにたいして、近年は遺伝子編集技術を用いて、さらに拒絶反応が起きにくいiPS細胞を作る工夫がなされるようになっています。iPS細胞の中にあり免疫を担当している部分のゲノム配列(遺伝子情報)にピタっとハサミをいれて遺伝子配列を「編集」することで、外から来たものと認識されなくなり攻撃をうけなくなる方法。2020年のノーベル化学賞を受賞したCRISPR/Cas9を用いたゲノム編集技術が応用されています。

 

免疫反応は回避し、穏やかに移植された場所に溶け込む。それでいて、個性を失うことなく、むしろ細胞本来の特性を活かして患者さんの欠損した部分を補っていく。まるで論語にいう「君子、和而不同。(くんし、わしてどうぜず。)」ですね。

 

CRISPR/Cas9技術に関しては次回以降に。こちらも研究者の情熱が織りなす、大変興味深いストーリーがあります。

 

 

ではまた!

 

(加藤基)

 

参考資料

AMED プレスリリース ゲノム編集技術を用いて拒絶反応のリスクが少ないiPS細胞を精製

 

AMED プレスリリース CIRSPR-Cas9を用いたHLAゲノム編集iPS細胞の作製方法と臨床応用に向けた詳細評価

 

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